不器用オオカミとひみつの同居生活。
「山川さん、お先に失礼します」
「お疲れカヤちゃん。気をつけて帰りなよ」
レジに立つ山川さんにぺこりと会釈して横を通り抜けた。
来たときよりほんの少しだけ膨らんだリュックを背負い直す。
「さむっ……」
先ほどとは違いスカートなので、風が吹くたび肌を刺されるような寒さに襲われる。
急がないと。
私の足は家がある方向ではなく、ゴミ箱の横へと向かっていた。
さっきから1ミリも動いてないのはきっと気のせいじゃない。
手に持っていた毛布をぱさりとかけても、壊れた人形のように目をつむったまま。
合い言葉をかけなきゃ動かない、からくり人形のようだった。
かたくなに目を開けないその姿は、私が立ち去るのを待っているようにも見える。