不器用オオカミとひみつの同居生活。
「……やっぱり花平くんの噂は本当だったんだ」
「噂ってなんの」
私はすうちゃんから聞いた、“暴走族の総長をやっている”という噂があることを話した。
すると花平くんが嘲るように息をもらした。
「んなことするわけねーだろ。どこにも属するつもりはねーし、だれともつるむ気もねーよ」
「でも、じゃあなんで喧嘩なんか」
「別に。売られるから買ってるだけ。
ま、たまに気分で売るときもあるけど」
花平くんは顔で後ろを示した。
「集団でしか戦えねーやつが世界で2番目に嫌い」
あーいうふうに、と。
視線を追うと、よろよろと逃げ去っていく不良たちの後ろ姿が見えた。
「ちなみに1番は?」
「……自分の顔」
「嫌味ですか?」
花平くんは何も言わなかった。