不器用オオカミとひみつの同居生活。


花平くんはしばらく黙って私を見つめていたけど、やがて小さく息を吐いた。



「まじで俺に興味ないんだな、お前」


つまり、興味がないから気付かずに入ってくるんだろ、と?


そういうわけじゃない、と思うんだけどな。



「というか、花平くんも入ってきたことあるじゃないですか」


そうだ、脱衣所で出くわしたことがあった。


あのときの花平くんもそこまであせってる様子はなかったし、お互いさまだと思う。うん。


「一回だけだろ」

「一回も数回も変わりませんよ」

「開き直ってんじゃねえ」



これ以上怒られる前に、と花平くんの横をするりと通り抜けてリビングに行くことにした。


通りすぎる際に、手に持っていた新しいバスタオルを差し出した。

いい加減、タオルで頭を拭くという行為を覚えてほしい。



それを受け取る……

ふりをした彼に、腕を引っ張られた。


< 87 / 403 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop