不器用オオカミとひみつの同居生活。
まって、待って。
さすがにそれ以上、上に行かれたら困るんですけど!
いくら私でもこれがまずい状況なのは一目でわかる。
そのときずっと無言だった花平くんが、私の耳を噛んだ。
「いっ、」
がりっ、と。
痛みを感じるより先に声が出てしまう。
「なっ……な、なん…!」
「お前が拾ってきたオオカミだから。せいぜい気をつけろよ」
じんじんする耳たぶを押さえる私に、
耳元でささやくその声が低く甘く鼓膜をゆすって。
べ、と舌を出した花平くんは私から離れていった。
「そ、それは反則でしょ……!」
熱くなっているのは、噛まれた耳だけじゃない。
顔にも全身の熱があつまっているのを素直に感じる。
どこに視線をやったらいいのかもわからなくて、私は声にならない声を上げながら。両手で顔をおおったのだった。