前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 隣にそろそろと顔を向けた瞬間、リップ音を立てて唇を奪われる。一度鼻先が触れ合う距離で見つめ合ったあと、再び唇が寄せられ、優しいキスは次第に濃密な交わりへと変わっていった。

 舌の先で唇をゆっくり開かされ、お互いの唾液が絡まる。こんなに淫らな感覚はもちろん初めてで、脳がキャパオーバーになりそう。

 しかしその間に身体を撫でられても、今は拒否反応は出ない。ただ、体温が上昇していくだけ。

 ふいにキスが止み、先生は表情がとろけているであろう私に意味深な眼差しを向けたあと、私のルームウェアのボタンに手をかける。

 急激に心臓の動きが速まる私に、彼は前開きのそれを外しながらこんな話をする。


「美來ちゃんに伊吹からの手紙を渡されたときは、正直チャンスだと思った。もし本当に結婚を望んでいるなら、俺のものにしてしまおうって」


 まさか先生がそんなふうに強引な考えだったとは、意外すぎるけれどとても嬉しい。


「絶対に引かれると思ったから、承諾されてすごく驚きました」


 素肌と下着が露わになっていく緊張を少しでも紛らせるためにそう言うと、「俺もだよ」と返ってきてちょっぴり笑いがこぼれた。
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