前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「これから関わることもあるかもしれないからよろしくな。櫂も、俺たちと家族として接してくれたら嬉しい」
なにも知らない久夜さんの言葉で、胸がキリキリと痛む。
久夜さんの家族は私の家族。そう思っているけれど、先輩に対してそんなふうに割り切れるだろうか。過去の出来事をすべて水に流して……。
すぐに〝無理〟の二文字が頭に浮かんでしまい俯き続けていると、黙っていた彼が口を開く。
「……わざわざそんな報告しに来なくていいってのに」
十年ぶりに聞いた彼の声は、昔より落ち着いている印象を受けたが、素っ気なく尖った部分はなくなっていない。
「俺はあんたを家族だなんて思っていない。誰と結婚しようがどうでもいいし、関わる気もない。帰って」
「櫂……!」
呼び止める久夜さんを無視して、先輩はドアを閉める。その直前に視線を上げた私の目には、煙たそうにしかめっ面をする彼の姿が映った。
あっという間にふたりに戻り、胸を撫で下ろす自分がいる。複雑すぎる気分で黙り込む私に、久夜さんは深いため息を吐き出して申し訳なさそうに謝る。
なにも知らない久夜さんの言葉で、胸がキリキリと痛む。
久夜さんの家族は私の家族。そう思っているけれど、先輩に対してそんなふうに割り切れるだろうか。過去の出来事をすべて水に流して……。
すぐに〝無理〟の二文字が頭に浮かんでしまい俯き続けていると、黙っていた彼が口を開く。
「……わざわざそんな報告しに来なくていいってのに」
十年ぶりに聞いた彼の声は、昔より落ち着いている印象を受けたが、素っ気なく尖った部分はなくなっていない。
「俺はあんたを家族だなんて思っていない。誰と結婚しようがどうでもいいし、関わる気もない。帰って」
「櫂……!」
呼び止める久夜さんを無視して、先輩はドアを閉める。その直前に視線を上げた私の目には、煙たそうにしかめっ面をする彼の姿が映った。
あっという間にふたりに戻り、胸を撫で下ろす自分がいる。複雑すぎる気分で黙り込む私に、久夜さんは深いため息を吐き出して申し訳なさそうに謝る。