前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
『まともにしゃべれもしないお前を相手にするヤツなんかいねぇのに』
『暇つぶしの価値くらいはあるか』


 先輩と再会したことで呪いのような言葉たちが蘇ってきて、過去の自分に戻ってしまいそうな気がする。だめだ、しっかりしなくては。

 久夜さんのおかげで、私は少しずつ前向きになってきていると思う。苦手な集まりにも、あえて飛び込んでみたら変われるかもしれない。

 彼の妻として恥ずかしくない女になろうと決めたのだ。もう戻りたくない。自分に価値がないと悲観していたあの頃の私には。


「……わかりました。入籍したばかりだし、挨拶も兼ねて参加させてもらいます」


 勇気を出して答えれば、久夜さんがやや心配そうに私をちらりと一瞥する。


「無理してない?」
「大丈夫です。私もお友達ができたら嬉しいので」


 ポジティブに考えて微笑むと、彼はいくらかほっとしたように「そうか」と頷いた。

 泣き言はやめて強くならなきゃ。大好きな彼のため、ふたりの未来のために。

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