前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 信じられない再会に大きな衝撃を受けたとはいえ、先輩と関わる機会はほとんどないので、日が経つにつれて心は平穏を取り戻していた。

 今日は特に気にしてはいられない。御船(みふね)院長の奥様に招待された食事会の日だから。

 午前十一時、タクシーで向かった院長のお宅は、久夜さんの実家よりもさらに豪華な邸宅だった。外観からして洋風のハイセンスなデザインで、目が点になる。

 緊張が高まるも、上品なダークミントのパンツドレスに乱れがないかを確認し、意を決してエントランスに入った。

 出迎えてくれた院長夫人の由紀(ゆき)さんは、五十代後半とは思えない美貌で、品よくアップにした髪型もよく似合っている。優しそうな印象でもある彼女に、私は粗相のないように挨拶する。


「はじめまして、明神伊吹です。今日はお招きいただき、ありがとうございます」
「こんにちは、伊吹さん。来てくれて嬉しいわ」


 聖母のような笑みを浮かべる彼女は、さっそく中へと私を促す。


「知らない人ばかりで緊張しちゃうかもしれないけど、伊吹さんと歳が近い人もいるから。固くならずに楽しんでいってね」
「はい。お邪魔いたします」
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