前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「放射線科医は希少な上にたくさんの診療科から依頼されますし、常に正しい判断を求められるから大変ですよね。旦那様はとても貴重な存在だと思います」

「明神さん……」


 少しでも園田さんの救いになればと、勇気を振り絞って声をかけると、彼女は澄んだ瞳で私を見つめる。

 教授夫人たちは一瞬黙ったものの、「そうねぇ」と笑顔で同意してくれた。


 それから園田さんとぽつぽつと話せるようになり、やはり私と似たタイプなのだと感じた。年はふたつ上だそうで、それも親近感が持ててちょっぴり嬉しい。

 料理をすべて食べ終えたあと、各々が持ち寄ったお茶請けを出したり、由紀さんのお気に入りの絵画や調度品を見たりしている間に、私はお手洗いに向かった。

 意外と順調に終わりそうだなと、だいぶ緊張が緩んだ調子でパウダールームのドアを開けようとしたときだ。


「明神さんって、おとなしそうな顔して案外生意気なのね」


 中から北澤さんらしき声が聞こえ、ギクリとして動きを止める。先ほど話していたときとは違い、トーンの低い棘のある声だ。

 もうひとりの教授夫人が同調し、さらにこんなことを言う。
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