前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「それに、あの手土産。無名のお店の安っぽい洋菓子なんてもらっても嬉しくないわよ」


 心ない言葉が胸に刺さる。

 私は今日の手土産に、例のお菓子の家みたいな洋菓子店で人気があるプティフールの詰め合わせを選んだ。確かに1ピース何千円もするような高級ケーキではないが、侮辱するのはあまりにひどい。

 おそらく私が園田さんの味方についたのが気に食わなかったのだろう。だからって、陰でこんなふうにけなすなんて。

 今後深く付き合う方々ではないからそこまでのダメージは受けないが、それでも悲しくなる。うまく人間関係を作れなかった過去が過ぎり、心は重く沈んだ。


 しばらく私の悪口が止まりそうな気配がないので、仕方なく別のトイレをお借りした。それからは内心この時間が早く終わることを願い、奥様方の雑談を聞きながら紅茶を嗜んでいる。

 昔の自分のように気配を消していたものの、ついに北澤さんが私に矛先を向ける。


「ねえ、明神先生はキャリアに興味はないの?」
「えっ」


 不気味に口角だけ上げた彼女に予想外の質問をされ、私は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
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