前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
医師のキャリアって、教授になるとか医学博士号を取るとか……よね。久夜さんとはそこまでの話はしていないからわからない。一度も医局には入っていないはずだから、教授を目指しているわけではないだろうけど。
なんと答えたらいいのか迷っていると、教授夫人たちは嘲った調子で次々と勝手な言葉を投げてくる。
「論文を書いたこともないでしょう。医者にとったら研究こそ命だというのに」
「ほら、最近の人って闘争心とか野望がないから。いくら腕がよくても、宝の持ち腐れになっちゃうわね」
クスクスと嘲笑され、私はいつの間にか肩をすくめて視線を落としていた。
……ああ、怖い。否定されるこの感じ。さっきまで久夜さんのことを褒めていたのに、手の平を返されて悔しくもある。
彼のことを悪く言わないで、と強く思うのに、なにもできない自分が歯がゆくて下唇を噛む。
しばし攻撃されっぱなしになっていたとき、突然院長夫人の由紀さんが「北澤さん」と名前を呼んだ。誕生日席に座る彼女を見やれば、なぜかこの部屋の入口のほうに視線を向けている。
話に熱中している教授夫人ふたりは耳に入っていないらしいが、私は由紀さんの視線を辿る。そして、大きく目を見開いた。
なんと答えたらいいのか迷っていると、教授夫人たちは嘲った調子で次々と勝手な言葉を投げてくる。
「論文を書いたこともないでしょう。医者にとったら研究こそ命だというのに」
「ほら、最近の人って闘争心とか野望がないから。いくら腕がよくても、宝の持ち腐れになっちゃうわね」
クスクスと嘲笑され、私はいつの間にか肩をすくめて視線を落としていた。
……ああ、怖い。否定されるこの感じ。さっきまで久夜さんのことを褒めていたのに、手の平を返されて悔しくもある。
彼のことを悪く言わないで、と強く思うのに、なにもできない自分が歯がゆくて下唇を噛む。
しばし攻撃されっぱなしになっていたとき、突然院長夫人の由紀さんが「北澤さん」と名前を呼んだ。誕生日席に座る彼女を見やれば、なぜかこの部屋の入口のほうに視線を向けている。
話に熱中している教授夫人ふたりは耳に入っていないらしいが、私は由紀さんの視線を辿る。そして、大きく目を見開いた。