前略、結婚してください～過保護な外科医にいきなりお嫁入り～

　皆さんの前でそう言い切られ、私は顔を熱くして縮こまる。由紀さんや園田さんはニンマリしているし、恥ずかしい……。

　久夜さんはそんな視線をまったく気にせず、「ですが」と続ける。


「今日の北澤教授の講演会はとても興味深く参考になりました。最新の医療知識や技術については今後もご教示いただきたいです、とお伝えください」


　えっ、今日の講演会って北澤さんのご主人が登壇されていたの!?

　今初めて知り、私は目を丸くする。呆気に取られていた北澤さんも、ご主人の話が出るとは思わなかったのか一瞬キョトンとした。そしてすぐバツが悪そうな顔に変わり、「わ、わかりました……」と頭を下げた。

　久夜さん、彼女たちをあっさり黙らせてしまった上にフォローも忘れなくてさすがです。と尊敬していると、彼は腕時計を見てから私に優しい眼差しを向ける。


「そろそろおいとましようか、伊吹」
「あ、はい……！　申し訳ありません、お先に失礼いたします」


　ここぞとばかりに腰を上げ、皆さんにお辞儀をした。久夜さんがどうしてここに来たのかは謎だが、ひとまず恐怖のマウンティングから抜けられて安堵する。