前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
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開放感のある大きな窓からは五月の暖かい日が差し込み、木製の棚には様々な背表紙が綺麗に並ぶ。鼻をかすめるのは大好きな本の匂いと、少し混ざる消毒液の匂い。
白藍総合病院の二階にある、この〝かきつばた図書室〟が私の職場だ。大学を卒業したあと、専属司書として働き始めて三年目になる。
かきつばた図書室は、当院職員や学生、研修者を対象に書籍を貸し出していて、医療従事者である彼らが調べものをしにやってくる。忙しい彼らがスムーズに目当ての本を探せるよう、日々努力するのが私の仕事。
同じフロアに、患者さんやその家族が利用できる患者図書室も併設されているため、結構広さがある。木のぬくもりを感じられるナチュラルテイストの内装で、毎日小さな子供やご老人が訪れ、憩いの場のひとつにもなっている。
カッターシャツに動きやすい黒のパンツ、そこにエプロンを着けたスタイルで、鎖骨辺りまで伸びたセミロングの髪は邪魔にならないよう纏めるのが私のお決まりだ。
地味なその姿で、今日も粛々と働いている。