前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
明日も、その先もずっと

 自分が失声症かもしれないと疑った私は、ひとりソファに座って久夜さんの手紙を見つめ、ただただ途方に暮れていた。

 土曜日で近くのクリニックも午前中しかやっていないため、正確な診断をしてもらうなら早く行かなければいけないのに、まるで身体が動かない。

 時間だけが過ぎていく中、テーブルに置いたスマホが着信音を奏で始める。画面に黒目だけを動かすと、大地の名前が表示されていた。

 力なくスマホを手に取り、いつもの動作で応答をタップする。そうして耳に当てるときになって、今自分は話せないことをはっと思い出し、慌てて電話を切ってしまった。

 まだまったく慣れなくて、身体はいつも通りに生活できると思っているみたいだ。

 何不自由なく暮らせるありがたみをひしひしと感じていると、再び大地から電話がかかってくる。

 突然切ったから不思議に思っているんだろう。でも出られないし、メッセージを送るにしてもどう伝えたらいいものか。

 電話が鳴り止んだあと、しばし悩んでメッセージを打っては消すのを繰り返していると、インターホンが鳴ってギクリとする。

 そうか、この対応もできないんだ。どうしよう、本当に困ることばかり……。
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