前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
『もしも伊吹が今つらいなら、頑張るのをやめてひと休みしていい。人様に迷惑かけなければ、ちょっとくらい逃げてもいいさ』
大地と祖母の言葉が重なって、気持ちが傾く。少しだけ明神伊吹としての生活をお休みすれば、心が回復して声も取り戻せるだろうか。
「こういうときくらい頼れよ。姉ちゃんの家はここだけじゃないんだから」
大地の優しい声がじんわりと沁み込んで、また涙腺が緩む。視界を揺らして、静かにこくりと頷いた。
ようやく腰を上げ、必要最低限の荷物をバッグに詰めた私は、久夜さんに短い手紙を書く。
〝久夜さん、本当にごめんなさい。急ですが、しばらく実家へ帰ることにしました〟
なにも明かさずに離れる私は卑怯で、身勝手だと重々承知している。でも事実を明かしたら、久夜さんはきっと自分を責めるだろう。その結果私たちの関係が壊れてしまったらと考えるとすごく怖くて、今は勇気が出ない。
手紙ならなんでも伝えられたのに、肝心なときに書けないなんて……。
皮肉なものだと自分に落胆しっぱなしだが、せめて彼への想いが変わっていないことだけは記しておきたい。
大地と祖母の言葉が重なって、気持ちが傾く。少しだけ明神伊吹としての生活をお休みすれば、心が回復して声も取り戻せるだろうか。
「こういうときくらい頼れよ。姉ちゃんの家はここだけじゃないんだから」
大地の優しい声がじんわりと沁み込んで、また涙腺が緩む。視界を揺らして、静かにこくりと頷いた。
ようやく腰を上げ、必要最低限の荷物をバッグに詰めた私は、久夜さんに短い手紙を書く。
〝久夜さん、本当にごめんなさい。急ですが、しばらく実家へ帰ることにしました〟
なにも明かさずに離れる私は卑怯で、身勝手だと重々承知している。でも事実を明かしたら、久夜さんはきっと自分を責めるだろう。その結果私たちの関係が壊れてしまったらと考えるとすごく怖くて、今は勇気が出ない。
手紙ならなんでも伝えられたのに、肝心なときに書けないなんて……。
皮肉なものだと自分に落胆しっぱなしだが、せめて彼への想いが変わっていないことだけは記しておきたい。