前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
〝明日もその先も、ずっと愛しています。お仕事、頑張ってください〟


 恥ずかしくて文字にしていた言葉も、今は自分の声で伝えたくて仕方ない。普通に話せる素晴らしい能力があったのに、それを使わなかったのはもったいなかったとすら感じる。

 いろいろな想いが巡るが今の私にはそれしか書けず、支離滅裂な手紙を残して大地と共にマンションをあとにした。


 実家に帰る前にランチを食べていこうと大地に連れられ、オシャレで居心地のいいカフェに入った。昨夜からほとんど食べていない胃には少しの量で十分だったが、いい気分転換になる。

 ランチを食べているときも、暑い日差しが降り注ぐ青い空の下を歩いているときも、大地は珍しく饒舌で私を励まそうとしているのは明白だ。

 声は出なくても、相づちを打ったりジェスチャーで表したりしているうちに自然に私の口角も上がっていて、彼の気遣いに感謝した。

 今日は両親はふたりとも用事があって出かけているそうで、久々に帰った家は静まり返っている。
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