前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「ゆっくりしてな」と言われて自分の部屋に入ると、一気に疲れが出てベッドに倒れ込んだ。大地と出かけている間は気を紛らせられていたが、やっぱり一時的だったらしい。

 沈んでいく気持ちと共に寝不足のせいか意識も落ち、私はいつの間にか眠りについていた。


 人の声がする気がしてふと目を覚ましたとき、空はオレンジ色になり始めていた。

 下の階からかすかに聞こえていた話し声は、ドアがバタンと閉まる音と共に止み、誰かが来ていたのだとわかる。

 お父さんたちも帰ってきているのかな。久夜さんはまだ勤務中だろうか。帰ってきて私の手紙を見たらどう思うだろう。失望するかな……。

 彼を想うと、会いたいけれど苦しい気持ちがせめぎ合い、幾度となくため息がこぼれた。


 ほどなくして帰宅した両親はどちらも私を見て驚き喜んだものの、声が出ないと知ると途端に心配を露わにした。

 私の代わりに説明する大地に補足を交え、彼らにも久夜さんのせいではないとちゃんと理解してもらったつもり。

 ふたりともどうしたらいいかわからない様子で最初は深刻な雰囲気になったが、夕食を終える頃には「好きなだけゆっくりしていきなさい」と、明るく接してくれるようになっていた。
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