前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 久々に家族と過ごすひとときに癒され、留守番電話に残る久夜さんの名前を見て、ひたすら彼を想いながら迎えた日曜日。

 午後三時を過ぎた今もベッドに座ってただぼんやりとしている私の中には、相変わらず虚無感が漂っている。まるでピースが欠けたままのパズルみたい。

 どこかに失くしたそれを見つけるためにも、とりあえず病院に行ったほうがいいとわかっているので明日受診するつもりだが、あまり気は進まない。

 職場のほうは、ボランティアの方に連絡を取って代わりに出てくれないかとメールで交渉し、快諾してもらえたので末永さんにも伝えておいた。今は詳しい説明ができないため、心苦しいけれど風邪だと嘘をついて。

 もちろんこんなことがいつまでも続けられるとは思わない。もしも治る兆しがないようなら、今後の仕事も考えなければ。

 仕事だけじゃなく、結婚生活も。久夜さんの負担になるくらいなら、いっそ別れたほうが……。

 大切な欠片がバラバラとこぼれ落ちていく感覚に襲われ、止める術が見つからない。胸が痛くて苦しくて、また過呼吸になる前兆なのか区別がつかなくなる。
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