前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 窓を開け、私も無意識に呼ぼうとしていたが声は出ない。それでも彼はこちらに気づき、切羽詰まった顔で私を見上げて口を開く。


「伊吹……すまない。俺のためを思って苦しんでいたんだろ? 謂れのない非難をされたり、櫂とのことで無理をしていたり。気づいてやれなくて本当に悪かった」


 え……久夜さん、どうして知っているの?

 困惑しながらも、決して彼のせいではないと伝えたくて首を横に振った。大地はさっきから追い返そうとしているのか、険しい表情で声を荒らげる。


「やめろって言ってるでしょう。そっとしておいてあげてくださ──」
「愛してる」


 大地の言葉を遮って、凛とした声が響いた。久夜さんは私だけを捉え、もう一度告げる。


「俺はどんな君も愛している。たとえ声を失っていたとしても」


 驚くべきひとことに息を呑んだ。まさか、そこまで気づいたなんて。

 呆然とする私を、彼は力強い瞳で一直線に見つめて続ける。


「この気持ちは一生変わらない。変わるわけがない。俺に生きる意味を与えているのは伊吹だ」


 ……こぼれ落ちた大切なピースが次々と掬い上げられる。こんな私に生きる力を与えるのもあなたしかいない。
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