前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 そんな高嶺の花の栄先生が、なんの取り柄もない私を気に入っているだなんてありえない。


「ないない! ないです!」
「伊吹ちゃん」


 ぶんぶんと手と首を振って否定する私に、末永さんはなんだか怖い形相で顔を近づけてくるので、肩を縮めて押し黙った。


「女の旬ってあっという間なのよ? 私はモテるから大丈夫!って自信過剰になってたら、婚期を逃しそうになってる女がここにいるの。余計なお世話だけど、伊吹ちゃんは男っ気がないから心配で」


 真剣に言う彼女はあと一年で三十路で、現在婚活中。顔のパーツがはっきりした美人だし、姉御肌タイプだし実際にモテるのだが、結婚に値するお相手には巡り会えないそう。

 自虐するところがまた憎めなくて、私が心を開いているうちのひとりでもある。ただ、私に男っ気のない理由までは知らない。

 栄先生に対しても気がないことを言いたいが、この手の話になると途端に言葉が出てこなくなるので、私はメモ帳を取り出してペンを走らせる。
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