前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 ああ、そういうことか……と納得して頷いた。

 つい先日、梨乃ちゃんが嬉しそうに『退院できるんだ!』と私たちに話していた。腎不全を患っている美來ちゃんは長期の入院生活を送らなければならないため、羨ましい気持ちがあるのかもしれない。

 どちらの気持ちもわかるから難しいな。なんとかしてあげたいけど……。

 そう思いながらお昼休憩に向かう途中、ロビーをとぼとぼと歩いている美來ちゃんを見つけた。その姿がなんだか寂しそうで放っておけなくて、近づきポンポンと肩を叩く。


「イブちゃん……」


 振り向いて目を丸くした彼女に私はにこりと微笑み、〝あっちへ行こう〟の意味で小児病棟のほうを指差した。

 花火や海の生き物の装飾が夏らしく可愛い病棟にやってくると、廊下の椅子に並んで腰掛けた。美來ちゃんも私が話せないのを知っているので、メモ帳にペンを走らせる。


〝梨乃ちゃんがいなくなっちゃうの寂しいね〟


 そう書いて見せると、彼女はいつになく元気のない表情をさらに暗くする。ストレートに振りすぎたかなと反省したのもつかの間、小さな口が開いてぽつりぽつりと話し始めた。
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