前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
〝自分では気づいていなくても、相手にとってはすごく大切なことをしているときもあるよ。美來ちゃんは恋のキューピッドだしね〟


 彼女に自覚はないかもしれないが、私たちの好きな人に手紙を渡したあの行動がきっかけでいい方向に向かったのだから、きっと梨乃ちゃんも感謝しているはず。

 その気持ちも、一緒に過ごした思い出も消えたりはしないよ、と伝えたくてメッセージを書いた。

 メモ帳を見つめる彼女は泣きそうになりながらも口角を上げ、「そっか……ありがとう」と呟いた。そして、反省するようにしゅんとする。


「梨乃ちゃんに八つ当たりしてきついこと言っちゃった……。もうすぐ会えなくなるのに」


 みるみる涙を溜める小さな彼女を見て、私まで目頭が熱くなる。同時に、ふと重南先輩との出来事が蘇ってきた。


『本当に嫌気が差すよ。こんなふうにお前に当たっちまう自分に』


 最後に会った日、苦しげにそう言っていた彼は、今の美來ちゃんと同じ心境だったのかもしれない。だとしたら、関係を修復するためにはもう一度話をして、許し合うことが必要不可欠だ。
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