前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
八月に入って数日後、頼んだ通りに先輩がやってきた。いつでも無愛想な姿を見るとまだ緊張してしまうが、心は落ち着いている。
パソコンに向かっていた私は立ち上がって会釈をし、図書室内のテーブルに促す。末永さんには事前に事情を話してあり、患者さんたちは昼食の時間でいないのでちょうどいい。
〝今日はありがとうございます。体調はどうですか?〟
横並びになって座り、メモ帳に書いて見せた。先輩は「今のところ問題ない」と答え、浮かない表情でぽつりと呟く。
「……いまだに声が出ないのか」
ぎこちなく口角を上げて頷けば、彼は気まずそうに瞼を伏せ、こちらに身体を向けてゆっくりと深く頭を下げた。
「悪かった。俺のせいで、たくさん苦しませて」
初めてちゃんとした謝罪をされ、なんとも言えない複雑な気持ちでペンを走らせる。
〝私も怯えて逃げてばかりで、ちゃんと向き合おうとしませんでした。ごめんなさい〟
先輩は呆れたような顔で「なんでお前が謝るんだよ」と、ボソッとこぼした。そして背もたれに背中を預け、どこか遠い目をして告げる。
パソコンに向かっていた私は立ち上がって会釈をし、図書室内のテーブルに促す。末永さんには事前に事情を話してあり、患者さんたちは昼食の時間でいないのでちょうどいい。
〝今日はありがとうございます。体調はどうですか?〟
横並びになって座り、メモ帳に書いて見せた。先輩は「今のところ問題ない」と答え、浮かない表情でぽつりと呟く。
「……いまだに声が出ないのか」
ぎこちなく口角を上げて頷けば、彼は気まずそうに瞼を伏せ、こちらに身体を向けてゆっくりと深く頭を下げた。
「悪かった。俺のせいで、たくさん苦しませて」
初めてちゃんとした謝罪をされ、なんとも言えない複雑な気持ちでペンを走らせる。
〝私も怯えて逃げてばかりで、ちゃんと向き合おうとしませんでした。ごめんなさい〟
先輩は呆れたような顔で「なんでお前が謝るんだよ」と、ボソッとこぼした。そして背もたれに背中を預け、どこか遠い目をして告げる。