前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
〝十年前のことは忘れられませんが、やっぱりやり直したいです。今度から櫂くんって呼んでいいですか?〟
新しい呼び方も結構本気で考えている。ちょっぴり勇気を出して見せれば、先輩はギョッとした様子で固まった。
数秒後、めちゃくちゃ微妙な顔に変わり、「そんなガラじゃねぇだろ、俺は」と言ってくしゃくしゃと頭を掻く。もしかして照れているのだろうか。
珍しい一面をかいま見て、声は出ないが笑っていると、なぜか私をじっと凝視している先輩に気づく。
「……やっと笑顔が見られた」
嬉しさと切なさが入り交じった面持ちで、彼はそう言った。こんなに優しい表情になるのは、私の前では初めてだ。
少しばかり驚く私をよそに、先輩は腰を上げる。そのまま立ち去ってしまうかと思ったそのとき、こちらに顔を向けて口を開く。
「あいつと……ひさと、幸せになれよ」
穏やかな声色で久夜さんの呼び名が口にされた。私たちの幸せを願うようになってくれたのも、とても嬉しい。
胸一杯に温かな感情が広がり、私は自然に笑顔になってしっかりと頷いた。
新しい呼び方も結構本気で考えている。ちょっぴり勇気を出して見せれば、先輩はギョッとした様子で固まった。
数秒後、めちゃくちゃ微妙な顔に変わり、「そんなガラじゃねぇだろ、俺は」と言ってくしゃくしゃと頭を掻く。もしかして照れているのだろうか。
珍しい一面をかいま見て、声は出ないが笑っていると、なぜか私をじっと凝視している先輩に気づく。
「……やっと笑顔が見られた」
嬉しさと切なさが入り交じった面持ちで、彼はそう言った。こんなに優しい表情になるのは、私の前では初めてだ。
少しばかり驚く私をよそに、先輩は腰を上げる。そのまま立ち去ってしまうかと思ったそのとき、こちらに顔を向けて口を開く。
「あいつと……ひさと、幸せになれよ」
穏やかな声色で久夜さんの呼び名が口にされた。私たちの幸せを願うようになってくれたのも、とても嬉しい。
胸一杯に温かな感情が広がり、私は自然に笑顔になってしっかりと頷いた。