前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 多少強引に結婚話を進めたのも、ずっと伊吹を忘れなかったのも。十年前、ガラスの靴のように置き去りにされたラブレターを見つけていたおかげでもあるのだろう。

 俺たちにとって、気持ちを文字にするのはとても重要な意味を持っていたのだ。


 挙式の本番を迎え祭壇の前に立つ俺は、隣に並ぶシンデレラさながらの彼女と過ごした日々に想いを馳せていた。

 滞りなくセレモニーが進み、誓いの言葉で「夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」と、伊吹が牧師に問いかけられる。

 背筋を伸ばした彼女はベールの下でしっかりと顔を上げ、以前と見違えるほど堂々とした様子で答える。


「はい、誓います」


 お決まりの言葉だが、やっぱり君の口から聞けてよかったと心から思う。


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