前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 無論、ご両親もトキさんも号泣していた。大地くんは涙を見せなかったが、目が赤くなっていたからおそらく堪えていたんだろう。

 褒められた伊吹は、照れたようにはにかむ。


「言葉で伝えるのは大切だけど、手紙のいいところは形として残ることですよね。これからも勝手に送らせてもらいます」


 声を出せなかったときも症状が治ってからも、弁当の中やテーブルの上に毎日彼女からのメッセージがある。

 それはどれもぬくもりを感じ、癒やされるし励まされるので大歓迎だ。


「もちろんどうぞ」
「じゃあ、さっそく」


 ふいに腰を上げた彼女は、チェストの引き出しからなにかを取り出し始める。再びソファに戻ってくると、シンプルで可愛い封筒を俺に差し出した。

 頭の中にハテナマークを浮かべ、とりあえずそれを受け取って中に入っている便箋を見てみる。


〝前略、ご報告があります〟

「え、なに」


 改まった調子の書き出しに、俺の口からいつかと同じく困惑した声が漏れた。伊吹はクスクスと笑っている。
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