前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 母もこちらにやってきて、炊飯器の蓋を開けて炊き込みご飯をつまみ食いする。はふはふしながら目を三日月みたいに細め、「うん、美味しい!」と褒めた。

 ……一応、家庭料理なら人並みにできる。掃除も洗濯も、好きなわけではないけど面倒くさがらずにやっている。

 だからきっと、私だって人の妻になれるはず。旦那様が明神先生なら、確実に今以上に頑張れるし。

 祖母のためだけじゃなく、自分のために結婚したいという思いは日に日に強くなっている。結婚を決意するのに必要なのは、あと少しの勇気だ。

 それを引き出すために、私は自信のない自分に〝大丈夫〟とひたすら言い聞かせていた。


 家族皆が帰宅すると、私が考え事をしながらつい作りすぎてしまった料理の数々をダイニングテーブルに並べた。集まった皆は、美味しそうにそれらを食べてくれる。


「これ姉ちゃん作ったの? 揚げ方、母さんより上手」
「まあ、憎たらしい子! せめて互角と言いなさい」
「そうだぞ、大地。伊吹の料理の腕は母さん譲りなんだ」


 相変わらず姉贔屓の大地に、母はむくれ、その母を大好きな父が加勢する。こういうやり取りは昔から変わらず、明るく仲のいい家族で幸せだ。
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