前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「絶対そいつに騙されてるだろ。つーか、彼氏ができたこともない姉ちゃんがいきなり結婚なんて、無理ゲーにもほどが──」
「よかったじゃない、伊吹!」


 大地の言葉を遮る母に、皆がギョッとして注目する。彼女は意外にも嬉しそうに頬を緩めていた。

 いや、意外でもないか。母は家族一ポジティブかつ寛大だし、私と恋の話をしたがっていたから。


「これまで全っ然男の子の話しなかったじゃない。伊吹はそういう気がないのかなとか、孫の顔は見られないのかなとか考えてたから、なんか安心しちゃった。そっか~、好きな人がいたのか~」

「待て待て待て。大地の言うように、そんな簡単に結婚を決めるだなんて、その男はいまいち信用おけない。どんな奴なんだ?」


 喜んでいる母を制し、困惑と危機感を露わにするのは父だ。眉間にシワを寄せて尋ねる彼に、ここだけは胸を張って答える。


「白藍の心臓血管外科の先生」
「あら~お医者様! いいじゃない、私たちになにかあったときも安心よねぇ」


 花を飛ばすくらいの調子で、両手を合わせて歓喜する母。大地は呆れたため息をつく。
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