前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「母さんは呑気すぎるだろ……。だいたい、好きって気持ちだけでやっていけんのかよ」
「確かにそれだけじゃ難しいかもしれないけど、一番大事なのは、結局のところ相手を思いやる〝愛〟だと思うわよ」
母はニコニコしながらも、真面目さが感じられる口調で語る。二十五年以上、大きな問題もなく結婚生活を続けている彼女の言葉には説得力があり、父も大地も反論はしなかった。
それぞれが思いを巡らせてしばし沈黙したあと、難しい面持ちの父が口を開く。
「とりあえず、彼を一度家に連れてきなさい。結婚を認めるかはそれからだ」
「……はい」
私は背筋を伸ばし、もうあとには引けない緊張感を抱いて返事をした。母も、うんうんと頷いている。
「そうね。私もすっごく会いたいわ。伊吹が恋するイケメンドクターに」
「誰もイケメンとは言ってない」
目をキラキラさせる母に大地がツッコみ、ひとまず話は一段落。私はホッと胸を撫で下ろし、ようやく食事を再開させたのだった。
夕飯を済ませてお風呂にも入ったあと、自分の部屋に戻った私は茶封筒を手にしてベッドに腰かけた。
外は強い風が吹いている。激しく揺れる木々と同様にざわめく胸を抑え、封筒を眺める。
「確かにそれだけじゃ難しいかもしれないけど、一番大事なのは、結局のところ相手を思いやる〝愛〟だと思うわよ」
母はニコニコしながらも、真面目さが感じられる口調で語る。二十五年以上、大きな問題もなく結婚生活を続けている彼女の言葉には説得力があり、父も大地も反論はしなかった。
それぞれが思いを巡らせてしばし沈黙したあと、難しい面持ちの父が口を開く。
「とりあえず、彼を一度家に連れてきなさい。結婚を認めるかはそれからだ」
「……はい」
私は背筋を伸ばし、もうあとには引けない緊張感を抱いて返事をした。母も、うんうんと頷いている。
「そうね。私もすっごく会いたいわ。伊吹が恋するイケメンドクターに」
「誰もイケメンとは言ってない」
目をキラキラさせる母に大地がツッコみ、ひとまず話は一段落。私はホッと胸を撫で下ろし、ようやく食事を再開させたのだった。
夕飯を済ませてお風呂にも入ったあと、自分の部屋に戻った私は茶封筒を手にしてベッドに腰かけた。
外は強い風が吹いている。激しく揺れる木々と同様にざわめく胸を抑え、封筒を眺める。