前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~

 明神先生とデートすることになった瞬間から、私はそわそわして落ち着かなくなっていた。なにせ男性とふたりで出かけるのは初めてだから、わからないことや不安だらけだ。

 二日間悩んだ結果、恋愛の大先輩である末永さんに相談してみることにした。

 出勤して開館前の清掃をしている最中、単刀直入に切り出す。


「末永さん、あの……デートするときって、どういう服装がいいんですかね?」


 開けた入口のガラス戸を拭きながら言う私に、掃き掃除をしていた末永さんの目がぎょろっと向けられる。


「こんなに話下手の私で大丈夫でしょうか……。面白おかしい話ができないと、つまらない女だって思われそうで」
「伊吹ちゃん」


 一方的に話す私のもとへつかつかと寄ってきた彼女は、私の両腕を掴んでぱあっと顔を輝かせた。


「例の好きな人と付き合うことになったの!? やったじゃなーい! 羨ましいー!」


 末永さんは最後に本音を交えて声を上げ、興奮気味に質問を続ける。


「いつ、どうやってそういう関係になったの!?」
「いやそれが、まだ恋人同士になったわけでは……」


 ないよね。お互いに結婚を承諾したとはいえ、まだまだ他人の域は超えていないし。
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