前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 不思議な関係だなとつくづく思うも、末永さんは単に私たちが友達以上恋人未満だと解釈したらしい。


「あ。そっか、これからなのね。いいじゃない、このデートでモノにしてらっしゃい! 独身三十路目前女の私のアドバイスが役立つかはかなり怪しいけど、持ってる知識は全部伝授するわ」


 またしても自虐しているが、恋愛経験豊富な彼女にアドバイスしてもらえるのは心強い。

「お願いします」と頭を下げたあと、廊下を歩く白衣を纏った人物が私たちのもとへやってくることに気づいた。

 朝から爽やかな笑顔を見せるのは、明神先生の同僚である栄先生だ。さらっとしたショートヘアも、少し垂れ目な整った顔も秀麗で、王子様と呼ばれるのも納得する。

 お互いに「おはようございます」と挨拶すると、彼は含み笑いをして私に目を向ける。


「たまたま通りかかったら思わぬ話を耳にしちゃったな。浜菜さん、デートする相手がいたんですね」


 ひー、聞こえていたの!? 図書室のドアを閉めて話すんだった!

 顔を熱くしてあたふたする私をよそに、末永さんがなぜか沈痛そうな面持ちになって頭を下げる。


「栄先生……ご愁傷様です」
「いきなりなんてこと言うんですか」


 栄先生は微妙な顔ですぐさまツッコんだ。おそらく、末永さんは栄先生が私のことを気になっているという噂を信じているせいだろう。
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