前略、結婚してください～過保護な外科医にいきなりお嫁入り～

　妙に納得して頷き、ゆっくりなペースでたわいない会話を楽しむ。話を聞いていると、先生は高級志向なわけでもなくいたって庶民派のようだ。気が早いが、私の素朴な手料理でもお気に召してもらえるかもしれない。

　密かに小さな希望を抱き始めていると、彼はクールな表情に優しさを滲ませて言う。


「頑張って作ったものに文句はつけないから、安心して毎日振る舞ってくれると嬉しい」


　その言葉は、これからの私との結婚生活を見据えたもの。似たようなことを考えていたのも、心の広い気遣いも嬉しくて、私はふふっと微笑んで頷いた。


　落ち着いた雰囲気の中いただいた御膳は、最初は緊張で味がわからなかったのが正直なところ。次第に美味しさを感じ始め、食べ終える頃にはだいぶ気がラクになっていた。

　明神先生の綺麗に食事する姿もちゃっかり堪能して、レストランのあとにやってきたのは映画館。

　実は前もってどこへ行きたいかを聞かれ、映画館をリクエストしていたのだ。初めてのデートだし、話下手でインドアな私にはこれがちょうどいいと思った。