前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「じゃあ終わったら語るから、覚悟しておいて」


 映画を見終わったあともふたりの時間があることが嬉しくて、私も口元を緩ませ、ほくほくした気分でチケット売り場に向かう先生のあとに続いた。


 ランチを食べたばかりなので定番のポップコーンはやめ、ドリンクだけ買って席につく。

 これからしばらく会話はおしまいだ。ホッとすると同時に、今日はいい意味で頑張っていないことに気づく。上手く話ができるか、ちゃんと間を繋げられるかと心配していたのに、自然に話せていたのだ。

 私にとってはすごい進歩だ。男性とふたりで食事したり、おしゃべりしたりするのをこんなに楽しめるなんて。

 やっぱり明神先生は特別。シアター内が暗くなっていく中、右隣にいる彼をしっかりと意識しつつそう実感していた。


 ──やがて始まった映画は、病院内で起こる不可解な事件に立ち向かう医師たちのストーリーで、ミステリー好きな私はすぐに引き込まれた。

 ただ、意外にも所々でホラー要素があり、若干ビクビクしている。普段テレビで怖い映像を見ていても平気なのに、映画館だとかなり迫力があるから……。
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