前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
映画が終わりエンドロールが流れてちらほらと席を立つ人が出てきても、シアター内が明るくなっても、手は離されなかった。
移動を始めてからも再び繋がれて、私も決して拒否することなく握り返している。
すごい……本物の恋人同士みたい。今日一日でかなり前進しているよ、私。
結婚に向けてちょっとだけ自信がついて、先生に寄り添いながら感想を話し合う。
「これはホラー映画か?ってとこもあったけど、なかなかだったな。医療についてもリアルに表現されていた」
「はい、面白かったです!」
手が触れたときは映画に集中できなくなったものの、そこからクライマックスにかけては再び展開に引き込まれ、純粋に楽しめた。先生が手を握ってくれていたから怖くなかったし。
普段は寡黙な彼が内容について結構語っているのも嬉しい。一緒に楽しめてよかった。
「さて、このあとは……」
映画館を出て、先生が切り出そうとしたとき、マナーモードにしていた彼のスマホが鳴っているのに気づく。
「悪い」と言って手を離した彼は、一度ディスプレイを見て真剣な表情になり、スマホを耳に当てた。