前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
目元のシワを深くしてニコニコしている彼女は、私の祖母だ。
「いいねぇ、アオハルだねぇ」
今どきの言葉を知っている祖母に吹き出しつつ、「おばあちゃん、こんにちは」と声をかけた。
高血圧で入院しているがまだまだ元気な、浜菜トキ、御年七十八歳。お茶目で明るい彼女が私は大好きで、毎日ここで会うのが仕事中の楽しみのひとつでもある。
祖母はカウンターのそばに椅子を持ってきて、よっこらしょと腰かけた。私は新しく購入した書籍の分類番号や受入番号などを入力しながら、いつものように彼女の話に耳を傾ける。
「私も昔はよく恋文を書いたもんよ。学校で一番ハンサムな男の子に。懐かしいわぁ」
ときめいた乙女の顔で語られたエピソードは、なんだかロマンチックな予感がして、キーボードを打つ手を止めて祖母に向き直る。
「もしかしてそれが──」
「伊吹のじいちゃんではないけどね」
「違うんだ」
肩透かしを食った私は、カクリと頭を垂れた。祖母は得意げに口角を上げて、「あの人からはもらうほうだったから」なんて言っている。
「いいねぇ、アオハルだねぇ」
今どきの言葉を知っている祖母に吹き出しつつ、「おばあちゃん、こんにちは」と声をかけた。
高血圧で入院しているがまだまだ元気な、浜菜トキ、御年七十八歳。お茶目で明るい彼女が私は大好きで、毎日ここで会うのが仕事中の楽しみのひとつでもある。
祖母はカウンターのそばに椅子を持ってきて、よっこらしょと腰かけた。私は新しく購入した書籍の分類番号や受入番号などを入力しながら、いつものように彼女の話に耳を傾ける。
「私も昔はよく恋文を書いたもんよ。学校で一番ハンサムな男の子に。懐かしいわぁ」
ときめいた乙女の顔で語られたエピソードは、なんだかロマンチックな予感がして、キーボードを打つ手を止めて祖母に向き直る。
「もしかしてそれが──」
「伊吹のじいちゃんではないけどね」
「違うんだ」
肩透かしを食った私は、カクリと頭を垂れた。祖母は得意げに口角を上げて、「あの人からはもらうほうだったから」なんて言っている。