前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 そういえば昼間、お互いの家がどの辺りかを話し、私の家は〝映える〟と巷で有名なオシャレで可愛らしい洋菓子店と同じ通りにあると教えていた。

 でも、なぜ今それを?と疑問に思いつつ、とりあえず頷く。


「はい、そうですが」
『家の特徴は?』
「モンブランみたいな色のレンガ調の外観で、赤い郵便ポストが目印の……って、まさか先生」


 質問に答えている最中にピンと来て、私は弾かれたように立ち上がり、ベッドに上ってレースカーテンを開ける。

 下の道路を見下ろし、驚きで目を見開いた。


『見つけた』


 スマホを耳に当てながらタイミングよくこちらを見上げた彼の、安堵したような声が鼓膜を揺する。

 胸の中で熱いものがぶわっと込み上げ、私はその勢いに任せて婚姻届を持って部屋を飛び出した。

 ダイニングにいた母や大地が、急いで玄関に向かう私に気づき「伊吹!?」と声をかけたものの、構わず外へ出る。

 私を見て、心なしか表情を柔らかくする明神先生のそばに駆け寄った。
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