前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 先生の目線がその用紙と、彼のマネをして貼りつけておいた付箋に落とされ、顔に熱が集まる。本当は封筒に入れて渡すつもりだったから、目の前で読まれるのはとても恥ずかしい。


〝先生を誰よりも近くで支えたいです〟


 付箋に書いたメッセージを読んだ彼は、感情が読み取れない無表情で俯き気味の私に目線を戻す。


「君は本当に可愛いね」


 今の顔とは不釣り合いな甘いひとことをかけられ、面食らった私は「えっ」と声を裏返らせた。そして全身が火照りだす。

 縮こまる私を見て、ようやく彼の顔に笑みが生まれた。


「ありがとう。俺のそばにいてください」


 プロポーズさながらの言葉をもらうのは、もう何度目だろう。そのたびに、胸が泣きだしそうなくらい熱くなる。

 今でも不思議で仕方ない。先生はどうして私との結婚を承諾し、大切に扱ってくれるのか。もし求婚したのが私じゃなくても、同じようにしていたのだろうか。

 もどかしさと、トクトクと鳴る心臓を感じながら彼を見上げていると、背後から「あの」という声が聞こえてくる。振り返れば、不機嫌さマックスの弟が据わった目で先生を捉えていた。
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