前略、結婚してください～過保護な外科医にいきなりお嫁入り～

「これから私たちも家族になるんだから、一家団欒に交ざってもらえばいいじゃない」
「え」
「もしお夕飯がまだなら、ぜひ食べていってください」


　三人が困惑の声をそろえたものの、母だけはワクワクしている。

　いやいや、先生絶対困っちゃうから！　お祖母ちゃんといい、母子そろってお節介が過ぎるよ。大地だって、表情からしてものすごく拒否しているし。


「お母さん、そんな急に──」
「じゃあ、お言葉に甘えて」


　諦めさせようとしている最中、先生はまたしても承諾してくれて、私も大地も目を丸くした。

　母は「よかった～。すぐ用意するから、上がって待っていてください」と上機嫌で家に向かい、大地はあからさまに嫌そうなため息をついて仕方なく戻っていく。

　残された私は、眉を下げて遠慮がちに先生を見上げる。


「すみません、先生。無理しないで断っていいんですよ？」
「いずれ挨拶するんだし、ちょうどいいだろう。早くこいつを出しに行きたいしね」


　彼は余裕な表情で、折り畳んだ婚姻届を掲げてみせる。結婚が一気に現実味を帯びてきて、私の胸は緊張やら嬉しさやらで騒がしかった。