前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
しばらくして父も帰宅し、突然待ち構えていた娘の婚約者に驚愕していた。
状況を飲み込めない父になんとか納得してもらい、母お手製の料理が並べられたダイニングテーブルに、いつもと並び順を変えて席についた。私の隣に明神先生、その向かいに両親、大地はお誕生日席でむすっとしている。
料理に手をつける前、父が険しい表情で先生を見据えて口を開く。
「明神くん、君は伊吹との将来を真剣に考えているのかい?」
父の問いに対し、先生は迷わずに「はい」と答えた。わが家では珍しい張り詰めた空気に、私は窒息しそうだ。
「なんで姉ちゃんを選んだんですか?」
立て続けに、大地が素っ気なくストレートな質問をした。それを聞くのか……と、内心焦る私。先生はどう答えるだろう。
ハラハラしてちらりと隣に目を向ければ、彼は相変わらず落ち着き払った様子で話し始める。
「伊吹さんはとても努力家で、患者だけでなく私たち医療従事者にも真摯に向き合おうとしています。そのひたむきな姿を見るたび、惹かれている自分に気づきました」
ああ、完全なお世辞だとしても嬉しくなってしまう自分がいる。おめでたいヤツ……。