前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
「しかもそれが結婚したい相手とは、驚いたよ」


 お父様も嫌そうな顔はまったくせず、朗らかに笑った。先生と目元がよく似た穏やかそうな紳士で、還暦を迎えているとは思えない。

 このおふたりは再婚したのだと、ここへ来る前に聞いていた。しかも、お母様は明神先生と約十歳しか離れていない。十五歳差の年の差婚なのだそう。

 これが複雑な事情のひとつなのだが、ご両親のどちらからも悪い雰囲気は漂っておらず、本当に私を受け入れてくれている感じがする。

 少しホッとする私は、お母様に「さあ、どうぞ」と促されて中へ上がった。


 案内されたダイニングは、レストランの一室では?と錯覚しそうなほど広々として綺麗だ。開放感のある大きな窓からはテラスが見え、とても優雅な雰囲気。

 テーブルの上には、私や母では絶対に作れないオシャレな洋食の数々が用意され、大袈裟じゃなくレストランさながらだった。

 ひとまず昼食をいただき始め、ご両親の質問にひとつひとつ答えていると、相変わらず表情を変えない先生がおふたりに向かってボソッと言う。
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