前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 そのひとことが嬉しくて、彼を見上げてふふっと笑った。もうこの人は旦那様なのだと思うと、胸がくすぐったい。

 それからささっと夕食の仕上げをして、ふたりで「いただきます」と手を合わせる。たった一日なのに長い間会っていなかった感覚で、先生の顔を見て、声を聞いているだけで幸せだ。

 彼は料理を残さず平らげたあと、「先に風呂行ってきな」と気遣ってくれたけれど、疲れているだろう彼から入ってもらった。

 その間に片づけを済ませて私も入浴し、寝る前にもう少しだけ一緒の時間を過ごせるかな、と期待して戻ったものの……。


「……寝てる」


 リビングのソファに座っていた彼は身体を横たえ、すっかり夢の世界へ行っていた。やはり相当疲労が溜まっているのだろう。

 綺麗なまつ毛、スッと通った鼻筋、薄く開いたセクシーな唇。先生は寝顔すらもカッコいいけれど、できれば笑った顔が見たい。

 さっそくすれ違いの生活で切なさを感じるも、彼の身体の心配も大きい。無理はしてほしくないが、患者さんたちの病気は先生の都合などお構いなしに進行する。
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