前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 複雑な気分のまま寝室からブランケットを持ってきてふわりとかけ、すやすや眠る彼に「おやすみなさい」と声をかけた。

 とりあえず、彼のために今自分がやれるのは明日のお弁当の用意だな、とペニンシュラキッチンに移動する。そして下準備をしている最中、ふいに以前梨乃ちゃんに言ったことを思い出した。


『お手紙書いたらどう? 会えなくてもお話できるよ』


 ……そうだ、お弁当に短いメッセージを書いた手紙を入れておこうかな。もしかしたら少しは先生の元気に繋がるかもしれない。ただの自己満足で終わる可能性もあるけど、気持ちは伝えられるし。

 ある程度の準備をしたあと、ダイニングテーブルに座ってメッセージカードにペンを走らせる。


〝美味しい料理と、先生が好きなビールを用意して今日も待ってます〟


 一日を乗り切る気力が出そうなセリフをあれこれ悩んだ結果、決めたのがこれだ。ご褒美があることが一番やる気が出るんじゃないかと、単純な考えで。

 なんの色気もないな。まあ、私らしくていいか。

 自嘲気味の笑いをこぼし、ソファで寝息を立てる彼に目をやる。メッセージを見てほっこりしてもらえることを願い、私も眠りにつくために腰を上げた。

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