前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 ……そ、そうだよね。もう夫婦になったんだもの、ひとつのベッドで寝るのが普通よね。私に覚悟ができればすぐに……。

 バスルームに向かう彼を目の端に映して緊張が徐々に治まっていくにつれ、ふと別の懸念が過ぎる。

 先生の気持ちはどうなんだろう。『伊吹さえその気になれば』ってなんだか受け身のような感じがするし、先生は別々のままでも問題ないのだろうか。

 以前、末永さんが『女の子とふたりきりでいたら、大抵の男はムラムラするものよ』なんて話していた気がするのだけど、先生は私を、その……抱きたいとは思わないのかな。

 私に女としての魅力がないから? それとも、私を好きじゃないから……?

 栄先生は私が気に入られているようなことを言っていたが、やっぱりそれは間違いかもしれない。

 悩み出すとネガティブなほうにしか考えられなくなりそうだったので、軽く頭を振って切り替え、ひとまず料理に集中した。

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