恋人のフリはもう嫌です
慰めて

慰めて

 ウィンドウショッピングをし、食事をした。
 心はどこか沈んだまま。

 彼に手を引かれ、気づけば彼のマンションに着いていた。

「上がっていく? 少し話したい」

 促され、彼に続いた。

「座って」

 進められるままソファに腰を下ろすと、彼も私の隣に腰を下ろした。

「昼に会った女性の発言、気にしている?」

「え」

 おもむろに質問をした彼は眉尻を下げ、私を見つめている。

「今日、心あらずだったから」

「それは、その」

「言いたくないのなら、無理には聞かない」

 彼の優しい囁きに、本音がこぼれた。

「今まで、本当に愛した方はいらっしゃらないのかなって」

「そっか。そこが引っかかったんだね」

 彼の口調は優しい。
 けれど、聞かない方が良かったのかもしれない。
 不安が渦を巻き、視線は下がっていく。

「俺だって、誰にも執着しなかったわけじゃない」

 ぽつりと呟いた彼の言葉は、寂しそうでもあった。

「忘れられない方が?」

「ミイっていう子で、少し千穂ちゃんに似ている」

 私の頬に手の甲を当て、彼は遠慮がちに私に触れた。
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