恋人のフリはもう嫌です
仕事を終え、ロビーで西山さんを待つ。
待っている方が注目を浴びるから、西山ファンに嫌がらせされるのでは。
彼の気遣いに対し反抗的な気持ちが思い浮かび、自分の気持ちが沈んでいるのだと気づく。
なにかにつけて女性が絡んでいて、彼と自分との格差を感じてしまう。
私に男の影はなにもないのに。
毎度のように、彼の女性関係を垣間見て嫌になる。
ウジウジ悩みながら待つなんて、柄じゃない。
自分のマンションに帰ろう! と、決めて歩き出した。
「すみません。藤井千穂さん、ですか」
自社ビルを出てすぐに、声をかけられた。
待ち構えていたようなタイミングに警戒して、声をかけてきた人に視線を向ける。
「あの、なにか」
若い男性だ。
知り合いではない。
今度は男を使った嫌がらせ?
男性はがっしりとした体つきで、力では敵いそうにない。