恋人のフリはもう嫌です

 松本さんは話しやすく、一気に打ち解けた。

 歳も23歳と近く、年上の人と働いていると年齢の話は気まずいなど、共感できる点がたくさんあって、話していて楽しい。

 言われてみれば自分の周りの人も年上ばかりで、同年代の人と話すのは久しぶりだ。

「千穂ちゃん。そちらは」

 息を切らした西山さんが現れ、松本さんを紹介する。

「松本機器の松本さんです」

 名前を聞いた西山さんは、仕事の顔に切り替えてすぐに名刺を取り出した。
 制止する暇もないほどに。

「ハハ。本当だ。藤井さんの言う通りだね」

 眉を潜める西山さんに、経緯を説明した。

 松本さんはキタガワと交流したいと訪ねて来てくださり、それならばと西山さんを待っていようという流れになった。

 待っている間に、私はまたまだで、西山さんこそ社会人として立派な方ですというような話をした。

「そうでしたか。お待たせして、すみませんでした」
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