恋人のフリはもう嫌です

 西山さんは、上司の一面も見せて松本さんに言った。

「藤井は、しっかりしていますよ」

「ええ。はい。父もそう言って関心していました」

 食事をしましょう。という流れになり、西山さんお勧めの和食屋さんになりそうだ。
 西山さんが、予約の電話を入れてくれる。

 西山さんが電話をしている間に、松本さんは私にだけ聞こえるボリュームで西山さんの感想を漏らした。

「西山さん、すごく仕事が出来そうだね。藤井さん大変じゃない?」

「大変?」

「だって肩凝りそう」

 肩を竦めて見せた松本さんは、堅苦しいのが苦手なのかもしれない。
 敬語も苦手と言っていたし。

 西山さん、今は対外向けの顔をしているからなあ。
 さすがに松本さんが西山さんと、フランクに話すのは難しいだろうなあ。

「私は、西山さんをとても尊敬しているから」

「そっか。藤井さんはすごいよ。俺なら怯んじゃうなあ」

 そう言われると、彼に仕事面で負い目のようなものをあまり感じない。

 それは、やっぱり。

「ううん。すごいのは西山さんなの」
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