恋人のフリはもう嫌です
西山透哉side
彼女は松本さんと初対面のはずなのに、すっかり打ち解けて楽しそうに笑っている。
たまに彼女が敬語混じりで話すと、その度に「敬語はいいのに」と言う松本さんに「公私混同するな」と声を荒げたくなる。
と、そこまで思って鼻先で笑う。
公私混同しているのは、どこのどいつだよ。
恋人のフリまでさせて。
「どうしました? なにか、面白かったですか?」
彼女はなにも気づいていない様子で、無邪気に聞いてくる。
「いや。二人は若いなあって」
わざとジジイ発言をして、自虐する。
「すみません。ウザかったですか」
表向きは申し訳なさそうにする松本さんが、わざと俺との年齢差を感じさせる話題を選んでしているのくらいわかる。
「いえ、楽しんでいただけているようで、良かったです」