恋人のフリはもう嫌です
恋人のフリはもう
恋人のフリはもう
私はどことなく釈然としない気持ちを抱えながら、西山さんと帰る。
今日は自分のマンションに帰るつもりだったけれど、彼のマンションに向かった。
マンションに着くと、彼はため息混じりに呟いた。
「もう少し、危機感を持って」
「なにがですか」
心のモヤモヤが、口調を強くさせる。
「男はみんな、下心の塊だと思った方がいい」
それは自分も、と言いたいわけ?
ただの下心だけで、私に手を出したと牽制したいの?
「松本さんはいい方で、西山さんが心配されたような下心ではなく、純粋に仲良くなれたかもしれないじゃないですか」
私だって、プライベートの連絡先を教えようとは思わなかった。
それなのに、この言われ方はひどいと思う。
「取引先の人との距離は考えて」
プツンとなにかが弾けた気がした。
私は忘れようとしても忘れられなかった、鞄の奥底に眠らせていたものを掴んで言葉とともに彼に投げつけた。