恋人のフリはもう嫌です

 インターホンを押すと「あ、西山さん」と、少しだけ驚いた声を聞いた。
 入り口のオートロックは解除され、彼女の部屋まで急ぐ。

 ドアの前まで行き、もう一度インターホンを押すと彼女がドアを開けた。

 彼女を見ると、もうダメだった。

「え、西山さん?」

 気付けば、彼女を抱きしめていた。
 玄関のドアが、背後で閉まる音を聞いた。

「あの」

 胸の中でくぐもった声を出す彼女に、胸を焦がす。
 覗き込むように、彼女の唇に触れた。
 抑えきれない欲情が、キスを深くさせる。

 柔らかな唇が僅かに残る理性を削り、腕の中にいる彼女の服の隙間から、直接彼女を捕まえた。

 華奢な腰回りに手を回せば、彼女は体を捩らせ訴える。

「西山さん、シャワーを」

 浅い息遣いをしているくせに、余裕ある態度が気に食わない。
 俺は、僅かな時間さえも惜しいのに。

 柔らかな肌に手を滑らせ、彼女の甘い声を聞く。
 首すじに唇を這わせると、彼女が胸をたたいた。

「私もシャワー浴びたいです。このままは嫌、です」

 彼女の恥じらいが、胸を震わせる。

「じゃ一緒に?」
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